こんにちは。タウです。最近真空エジェクタについて学ぶ機会があったので、選定する際に気をつける点や、真空エジェクタの仕組みについて解説します。
真空エジェクタとは?
真空エジェクタとは、真空発生装置ともよばれるとおり、真空を発生させる装置です。似たような機能を持つものに真空ポンプがありますが、真空を発生させる仕組みや装置の大きさなどがことなります。
真空エジェクタの構造
真空エジェクタの構造は図のようになっています。

圧力を供給するポートにコンプレッサーなどからの圧力を供給すると、吸引ポートへ空気が吸い込まれます。供給用ポートはカタログではSUP.、吸引用ポートはVAC.などと記載されています。排気用のポートはEXH.などと記載されています。ここを塞ぐと吸引できなくなるので注意が必要です。
次に真空エジェクタの動作原理を解説しますが、とりあえず使えれば良いという方は、供給ポートに圧縮空気を送って貰えれば吸引できます。
真空エジェクタの動作原理
動作原理に興味がない方は選定方法まで読み飛ばしてください。
真空エジェクタは、一言で言えばベルヌーイの定理を利用して真空を発生させています。飛行機が飛ぶ原理と同じです。
図のような断面積が変化する流路において
圧力:\(p\, [Pa]\)
密度:\(\rho\, [kg/m^3]\)
高さ:\(z\, [m]\)
重力加速度:\(g\, [m/s^2]\)
圧力と運動エネルギーと位置エネルギーの和は次の式のように表せます。

\[p_1+\frac{1}{2}\rho v^2_1+\rho g z_1=p_2+\frac{1}{2}\rho v^2_2+\rho g z_2\]
供給ポートの断面積を\(A_1\)、供給ポートから供給されたエアの流速を\(V_2\)、ノズルの断面積を\(A_2\)、ノズル出口での流速を\(V_2\)とします。真空エジェクタでは、流路の高さは一定なので位置エネルギーは変化しないので、エネルギーの変化は次のように表せます。

\[p_1+\frac{1}{2}\rho V^2_1=p_2+\frac{1}{2}\rho V^2_2\]
また、供給ポート~ノズル出口で流量は一定で、\(A_1>A_2\)であることから、\(V_1<V_2\)となります。この時\(p_1>p_2\)となり、吸引ポートから空気が流入します。
以上が真空エジェクタの仕組みです。排気ポートを塞ぐと供給ポートから空気が流入しなくなり、真空エジェクタが機能しなくなるわけです。
真空エジェクタの選び方
ここでは真空エジェクタを選ぶ具体的な方法をご紹介します。
具体的には以下の3つの観点から選定するのが良いかと思います。
- 最大真空到達圧力
- エア消費量
- 真空圧力が高くなる圧力帯
上記の3つは全てカタログに記載されている排気特性から読み取ることができます。
排気特性
真空エジェクタのカタログには多くの場合このようなグラフが記載されています。

グラフの読み方は簡単で、供給ポート供給されたエアの圧力(横軸)に対応する真空圧力(縦軸)と吸引ポートから流入する吸込流量(縦軸)と供給ポートへ流入するエアの量=エア消費量(縦軸)を表します。正直、物を吸着するだけならどのエジェクタを使っていただいても対して変わりません。パッドなどでワークを吸着する場合は、真空圧力とパッドの大きさが重要です。だいたいどのメーカーのエジェクタでも-90 kPaくらいは出せるものが用意されています。
吸着時間を気にする場合は、SMCが公開している吸着時間の計算方法を参考にするのがいいかと思います。吸着時間=配管内の空気を全て抜くまでの時間なので配管の容積÷真空エジェクタの吸込流量で計算できます。
真空エジェクタのメーカーごとの大きな違いは、排気特性の真空圧力の曲線です。例えば、供給圧力がいくつのときに真空圧力が最大になるか、供給圧力の増加によってどのように真空圧力が増加していくかなどが異なります。真空エジェクタをどのような圧力帯で使用するか、どの程度の速で吸着したいのかなど、使用環境に応じて選定しましょう。
選定時の注意点
カタログにも記載がありますが、真空エジェクタには動作が不安定になる場合があります。すべての真空エジェクタにあてはまるわけではありませんが、真空圧力がピークとなる直前の供給圧力で使用すると動作が不安定になることが多いです。先ほど解説した排気特性でいうとこの辺りです。

この辺りの圧力帯で使用すると、エジェクタからコポコポと間欠音がして、真空圧力が数kPaの範囲で上がったり下がったりします。使用方法によっては支障が出る場合があるので注意が必要です。
安定した真空圧力で使用したい場合は、図のような範囲の圧力帯で使用すると良いでしょう。

また、エア消費量が大きいエジェクタを使用すると、圧力源によっては真空圧力が上がりきらないこともあります。その際は増圧弁などを使用することも視野に入れると良いでしょう。
まとめ
真空エジェクタを選定する際は、排気特性から以下の3点について読み取り選定しましょう。
- 最大真空到達圧力
- エア消費量
- 真空圧力が高くなる圧力帯
使用環境や目的に合わせて、適したエジェクタを選んでください!
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